【医療被曝が心配】短期間で何回もレントゲンを撮っても大丈夫?

この前、レントゲンを撮ったばかりなのに、また撮ることに。レントゲン撮影では微量とはいえ放射線を使っているので、短期間に何度も撮影していると被ばくの量も多くなってしまうのでは?レントゲンを短期間に撮ることは大丈夫なのでしょうか。

※ この記事ではX線単純撮影のことをレントゲンと表現しています。

レントゲン(X線単純撮影)やCTの放射線は身体の中には溜まらない。

福島の原子力発電所の事故のときに出てくる放射性物質とは、放射線を発生させる物質のことで、レントゲンやCTの放射線とは大きく異なります。放射性物質の放射線は人為的に放射線の発生を止めることはできませんが、レントゲンやCTで使われる放射線は機械的に発生させているものなので、スイッチのオン・オフで切り替えられます。放射性物質は体内に摂りこまれると体内から放射線を発生します(内部被ばくと言われます)。対して、レントゲンやCTで使われる放射線は機械が発生させているだけなので体内に発生源は摂りこまれません。つまり体外から当てられる放射線だけです(外部被ばくと呼びます)。

レントゲンで健康障害の発生が増えたということは報告されていません

検査を受けることで、被ばくによるダメージが回復せず、健康障害が起きてしまうような気がします。確かに、放射線にはさまざまな健康障害が発生することは確認されています。しかし、医療で使われるレントゲン撮影ではどうでしょう。実は、現在までレントゲンによる健康障害が発生したという事実は報告されていません

放射線による健康障害の発生

健康障害といっても様々。放射線による健康障害だと、みなさんがイメージするのは、ガンであったり胎児の奇形、脱毛、皮膚の発赤などでしょうか。他にも様々な影響があることが現在の医学ではわかっています。

健康障害には、大きく2種類に分けられます。一つは、一定以上の放射線を浴びると100%発生する確定的影響。もう一つは、少ない放射線量から発生率があり、浴びれば浴びるほど障害が発生する確率が上がる確率的影響です。

確定的影響

ある一定以上の放射線を浴びれば100%発生するのが確定的影響です。ある一定以上というのは、発生する異常によって異なります。例えば、脱毛であれば3Gy(=3000mGy。単位の説明は下でしています。)白内障であれば、2Gyだったりと数字以下の放射線量だと障害を発生させません。この、これ以上浴びれば障害が出るという放射線量のことを閾値(しきい値)と呼びます。閾値が低い障害ほど、発生しやすいということになります。

放射線被ばくの単位について

身体全体に浴びたものを評価する場合にはSv(シーベルト)を用います。対して、身体の各部位毎に評価する単位としてGy(グレイ)があります。

1回の医療被曝では、目的毎に放射線を浴びる場所が異なります。そのため、臓器によって被ばくしている量は違います。臓器や部位毎によって評価するためにはGyを使います。

確定的影響の中で最も閾値が低いのが、白血球の減少です

少ない放射線でも障害がでるのではないかと考え、少ない線量で発生する白血球の減少について考えてみます。

白血球の減少は、約500mGy(0.5Gy)を浴びることで障害が出ると言われています。撮影頻度の多い胸部のレントゲン撮影では、1回撮影すると約0.03mGy(0.00003Gy)の骨髄への被ばくがあります。胸部撮影では8300回以上の撮影で白血球の減少の障害が発生する計算になります。

確率的影響

少ない放射線から発生する可能性があり、浴びれば浴びるほど発生する確率が上がると言われる障害です。この確率的影響で発生が考えられるのがガンや遺伝的影響です。つまりガンや遺伝的影響は、少ない放射線量から発生する確率があると考えられています。

レントゲン撮影でも障害が発生する確率が上がるのでは?

放射線ががんや遺伝的影響を発生させることには間違いありません。しかし、ガンや遺伝的影響は放射線以外からも発生する原因があります。例えば喫煙や食生活、アルコール、感染症などです。少ない放射線量による、がんや遺伝的影響が増えるという疫学的な調査はなく、がんや遺伝的影響の発生が増加しているのが確認できたのは、100~200mSv(ミリシーベルト)以上です。100mSvの被ばくでがんによる死亡率が増えるとしても0.5%の増加です。それ以下の被ばくは科学的に証明されておらず、レントゲン撮影で発生が増えたという報告もありません。

単純計算では胸部は300回で100mSvになる

撮影頻度の多い胸部撮影では被曝線量は0.3mGyです。単純な計算で300回の撮影で100mGyとなり、0.5%のがんの死亡が増える計算にはなります。しかし、実際は50mSv以下の被曝では、他のがんの発生の要因もあるため、被ばくによるがんの発生率の差というのは疫学的なデータは出ていません。

これだけの撮影は数日、数カ月で行われることは現在の医療ではありえません。数年にわたってこれだけの回数を浴びたとしても、その間に細胞も修復されていますので、影響はより少なくなると考えられます。

放射線の単位について②

1回の医療被曝では浴びる場所が異なりますが、管理するためにはSv(シーベルト)が使いやすく、Gyを用いずにSvの表記で管理されることが多いです。Svを使うことで全身の被ばくとして一括で管理することができ、被ばくの評価がしやすくなります。

経過観察に向いているレントゲン撮影

レントゲンは時間をおいて撮影して経過観察をすることに向いている撮影です。

例えば胸部X線撮影。胸部のレントゲン写真において、影が写ることは少なくありません。影が写っていたとしても、前回の写真と比較して影が大きくなっていないのであれば、良性の病変が推測ができるので、経過観察をするメリットがあるといえます。

胸部以外でも、骨折の経過観察でも骨がくっついている様子や、骨がズレてしまっている様子などがうかがえます。CTよりも少ない放射線量で簡便に撮影できるレントゲン撮影は、検査の中でも経過観察に向いている撮影なのです。

まとめ

短期間でレントゲン撮影は大丈夫かという記事でした。結論は、レントゲン撮影は被ばく線量が少ないですが、リスクを過大評価をしたとして、1日に300回撮影すると身体に影響が出る可能性があるということでした。実際は、施設毎や部位毎の放射線の量、患者の放射線の感受性や体型など様々な因子があるので、一概には言えませんが参考にしていただければよいかと思います。