レントゲンの撮影中に扉を閉めないときがあるけど、大丈夫なの?

検査中に放射線技師が扉を閉めずに撮影を行うことがありますが、大丈夫なのでしょうか。レントゲン撮影室の扉には重たい鉛が含まれていて、扉を閉めていると外に放射線が出てこないようになっています。扉を閉めなくてもいいのなら、鉛の扉にする意味が理解できません。今回は、レントゲン撮影で扉を閉めないことをテーマにしました。

※ この記事ではX線単純撮影のことをレントゲンと表記しています。

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結論から説明すると、気にするほどのことではありません

扉をあけたままの撮影でも部屋の外にいれば検出できないレベルか極微量の被ばくです。検出できるレベルの極微量の被ばくをしていても放射線による障害が出ることは考えにくいでしょう。

ただし、日常的に故意に放射線に当たりに行こうとすれば、がんの発生率が増える可能性もあるので、避けられるのであれば避けておいた方が良いでしょう。

では、どういうことかを、順をおって説明していきます。

レントゲン室の扉は2カ所の場合が多い

患者さんの待合い場所や廊下につながる側に1つと、技師が機械を操作する側の1つです。どちらの扉にも鉛が含まれていて重く、撮影室の外へ放射線が漏れないような構造になっています。指示があるまでは扉を勝手に明けてしまわないように注意しましょう。

X線撮影室は法律により管理されている

レントゲン撮影の時に使う放射線は、機械的に発生させているもので空気中に残るようなものではありません。スイッチを押している間だけ放射線が発生するのです。

X線には透過性がありますが、鉛にはX線を止める能力がありレントゲン撮影室やCT室、その他の放射線を扱う部屋の壁や扉には鉛が含まれています。経年劣化で壁から放射線が漏れているかもしれないので、半年に一度は必ず放射線が漏れていないかをチェックするように義務付けられています。このように、漏れ出てくる放射線のことを漏洩線量と呼び、放射線の扱いを厳重に管理された部屋のことを管理区域と呼ばれます。

厳重に管理されているのに、扉をあけていていいの?

放射線技師は撮影のタイミングによって機械側の扉をあけたまま撮影を行うことがあります。放射線技師は、漏れて出てきたX線を浴びることに抵抗がないのでしょうか。実はそういうわけではありません。

扉を開けたまま撮影をするメリットもある

撮影時、重い扉の開け閉めをする時間も惜しいくらいに、急いで中に入らなければいけないときや、中の様子をしっかり確認しながら撮影したい場合には、扉を開けた方が良い場合があります

例えば、小さな子供の撮影です。子どもの撮影では、ポジションを合わせたときには、きちんとした格好をしてくれていると思ったのに、数秒の間に注意がそがれてしまい動いてしまっている場合も多くあります。動いてしまっては、撮り直しになってしまったり、診断能力の低い画像を医師に提供することになってしまいます。そうならないためにも、中の子どもの様子をしっかりと確認しながら撮影をするべきです。

また、子どもですから、扉が閉まってしまい完全に一人になってしまうと不安になることもあるでしょう。そういう場合には扉をあけた方が撮影しやすいと判断します。子ども以外にも、高齢者、ケガや気分不良でじっとしていることが困難な患者でも同様です。

漏れている放射線の被ばくは気にしないの?周りのスタッフが被ばくするのでは?

放射線技師は看護師に比べれば男性が多く、無頓着な風にも見えますよね。開いたままの扉の向こうにいる人が被ばくすることも気にしていないようにも見えてしまいます。扉を閉めることを面倒くさがって閉めてくれないようにも思えます。

しかし、実はそこまで気にする放射線の量が漏れているわけではありません。レントゲン撮影では、漏れてくる放射線の量はほぼゼロに等しい、もしくは極微量です。

どれくらいの放射線量が出ているのかを考える

ほぼゼロや極微量とは言え、放射線が部屋の外に漏れているのは気になってしまいます。実際、どのくらいの量になっているのでしょうか。

レントゲンで発生する放射線には直接線と散乱線がある

レントゲン撮影では患者に直接X線を当てて画像を得ます。この時、直接線を当てる部分には光で照射する場所を決めることができ、照射野といいます。つまり照射野に含まれる部分だけが直接線をあびることになります。

一方、照射野外にある部分には直接線は当たりません。直接線が周りに飛び散ります。その飛び散ったX線が散乱線となります。

X線は距離が離れれば少なくなる

放射線をボールで考えてみましょう。狙ったところには狙った量のボールを投げるとします。投げたボールはものに当たるとほとんどが受け止められますが、一部は周りにちらばります。散らばっている最中に勢いがなくなりX線は消えてしまいます。このように考えると、遠くになればなるほど、ボールが飛んでくる確率が下がることが理解できます。

放射線防護の観点からも、同じ部屋の中でなるべく放射線の被ばくを受けないようにするためには距離をおくことは大切になります。

2メートル離れれば、検出できないレベルまで減る

X線管球の向きや放射線の出力する量や強度によって若干変わりますが、基本的にはX線を発生している装置から2メートル離れていれば、検出ができないレベルまで放射線量は少なくなっています。2メートルがどのくらいかわかりづらいかもしれませんが、女性であれば5歩程度、両手を広げれば1m50cmなので両手+α程度まで距離をとれば検出できないレベルまで放射線量が少なくなっていると考えても大丈夫でしょう。しかし、X線を発生する機械が自分の方を向いている場合は、異なります。その場合は扉を閉めている方が適切ですが、どうしても閉められない場合もあります。その場合は距離をとったり、物の影に隠れるようにしましょう。カーテンでは放射線は止められませんので、意味がありません。もしも、直接線を浴びてしまったとしても焦る必要はありません。

微量な放射線の被ばくで健康障害は出ないの?

レントゲン撮影で健康障害が発生したことは現在まで報告がありません。それは直接線を浴びている患者においても、業務を行っている放射線技師においても同様です。放射線技師は自分の被ばく線量を線量計を身に付けて管理されていますが、日常業務で扉をあけたままレントゲン撮影を行う程度で健康障害が出るほど被ばくする(100mSvが検出される)ことは考えづらいでしょう。レントゲン撮影は放射線を扱った検査の中でも最も少ない放射線で撮影を行っているからです。