胸部CTで見つかった肺の影。もしかして悪性?

胸部単純撮影で肺に影が見られた場合、精密検査としてCT検査はかなり重要な位置にあります。肺癌に対するCT検査の役割は、「肺癌が疑われる人の肺に影がないかを調べること」、「肺に見つかった影が良性か悪性かの鑑別をすること」、そして、「悪性が強く疑われた場合に”ステージング”といって病期診断をすること」の3つです。悪性がかなり疑われる場合には、気管支生検などで組織をとり確定診断を進めます。しかしCT上では判断に迷うような場合は経過観察をするのが一般的です。

この記事では、胸部CTにおいて見つけられた影が良性か悪性かを見分けるポイントについて解説します。

CTだけで悪性と確定することはできない

CTで見られた肺の影。いくら顔つきが悪そう(悪性が強く疑われる)とは言っても、実はCT検査だけで確定することはできません。確定させるためには気管支生検などの組織をとって調べる病理検査を行わなければなりません。ただし、影が見つかる度に、患者さん全員に針を刺して生検なんて、とてもしていられません。影があったからといって悪性である確率は数パーセントだからです。ある程度は、CT検査で悪性らしい影をピックアップする必要があるのです。

画像診断のガイドライン上では、肺癌におけるCTの役割は大きい

肺にできた影の良性・悪性を見分けるためにCT検査を行うことはグレードA(科学的に強い根拠があり推奨される)に分類されます。CTだけでは悪性が確定できないとは言え、CT検査は肺癌の診断にかかせない検査です。

CTにおける肺を見る画像と心臓やわきなどをみる画像

肺のCTには大きく分けて2種類の画像がある。一つは肺を見るための白っぽい画像。もう一つは心臓やわきなどをみる黒っぽい画像。肺は空気がほとんどでX線の吸収がすごく少ない。そのため、心臓と一緒に見ようとしても適切な色合い(濃度)にはならない。そこで肺を見るための画像と心臓などの肺以外の軟部をみるための画像の2種類の画像をつくっている。それぞれ肺野条件と縦郭条件(軟部条件)などと呼ばれる。

良性・悪性を見分けるポイント4

1)肺の影の大きさ

2)影の辺縁

3)影の内部

4)影の大きくなるスピード

悪性が疑われる画像所見

1)大きさ

影の大きさは3㎝以上。それよりも大きな影は悪性が疑われます。もちろん、影といってもさまざまなものが存在します。胸水といって胸郭内に水が溜まっている状態も影と表現されます。肺の大部分を侵すような大きな影は浸潤影と呼び、腫瘍が疑われるような影は腫瘤影と呼ばれます。反対に3cm未満の影は結節影、さらに小さく5mm未満の影は粒状影と呼ばれます。影の中でも呼び方はさまざまです。

2)影の辺縁

辺縁が分葉状(切れ込みがある)のものは悪性が疑われます

分葉状とは、図のような形です。癌細胞は、細胞が無制限に増殖している状態、つまり細胞がどんどん大きくなろうとしている状態です。大きくなろうとする細胞は部分部分で増殖スピードが異なります。そのため、凸凹の形になるのです。さらに、大きくなろうとしているところに肺の中にある気管支や血管がぶつかればそこは大きくなりにくくなり、切れ込みのように見えるのです。悪性である癌細胞が分葉状(切れ込み)をつくる理由なのです。

分葉状陰影

胸膜のひきつれ、肺静脈の巻き込みなど周りを巻き込むものは悪性が疑われる

周辺の組織を巻き込もうとしているのは、癌細胞の可能性が高い所見です。癌細胞は大きくなろうとする以外に、周りの組織を引っ張り込んでしまう性質もあります。その結果、胸膜、血管、気管支など周辺の組織を引っ張ってしまいます。そうして”スピキュラ”と呼ばれるトゲトゲしたウニのような形をするのです。ウニのような形のスピキュラまででなくても鋸歯状と呼ばれるノコギリの歯のようなトゲトゲの場合もあります。

トゲトゲしたスピキュラのCTの画像

辺縁がツルっと丸いものは良性の可能性が高い

これまで説明した悪性を疑わせる辺縁は、トゲトゲがあったりすりガラスがあったり切れ込みがあるなど、どれも辺縁が不整なものでした。つまり反対に影の辺縁がツルっとしているものや境界がくっきり見えているものは良性の可能性が高くなります。

3)内部の性状

良性が疑われる画像所見3点

・石灰化が含まれる

・脂肪が含まれる

・造影CTで白く染まらない

・石灰化が含まれると良性を示唆する

石灰化は骨くらい白っぽい濃度を示す影です(図を参照)。影の中に石灰化が見つかればほとんどの確率で良性といえます。しかし、石灰化があったからといって100%安心できません。中には悪性のものでも石灰化を含むような紛らわしいものまで存在するのです

石灰化があって悪性である可能性はだいたい5~10%だと言われます。

石灰化

・脂肪が含まれれば良性の可能性が高い

脂肪が含まれるものを見つけるのは稀な例です。しかし、見つけることができれば過誤腫という良性腫瘍であることが確実になります。脂肪は、上述した軟部条件にて観察されます。影の中に少しだけ黒っぽいものが見つかればそれが脂肪です。しかし陰影が小さい場合だとアーチファクト(偽造)である可能性もあるので、正しい評価が難しくなります。

・造影CTで染まらないのは良性の可能性

そもそも造影CTとは?

造影CTの話だけでも奥が深いので、まずは簡単に造影CTについて解説します。造影剤はその名前の通り“影を造るための物質”です。影というのはX線写真上の影の話。X線をほとんどせき止めてしまうような物質です。CTにおいて、造影剤が入っていれば、X線の通過を許さず止めてしまいます。X線が通過しにくくなるため、造影剤が入った臓器や組織はCT上では白く写ります。つまり造影剤が入った個所は白いコントラストがつくということ。この性質を利用して造影CTは撮影されます。造影剤を体内に入れて撮影すれば造影剤が身体の至る所へ染み込んでいきます。造影CTでは、造影剤が染み込んでいる様子を見て病変部分や正常部分を見分けています。

影が良性だと造影CTで染まらない

影が悪性の場合は造影CTで良く染まります。癌は周りの組織をよく巻き込むと説明しましたが、周りから栄養をもらうために血液も巻き込むのです。その結果癌は、造影すると血流にのった造影剤を取り込むので染まりやすいということです。

しかし染まるのは癌があるときだけではないのです。他の炎症性疾患などでも造影して白く染まることがあるようで、染まることが100%悪性となることでもありません。

正しく診断される確率の評価

正しく診断される確率を”正診率”と呼びます。正診率は、医師が病気の人に対して病気があると診断できる確率と、病気がないひとに病気がないと診断できる確率で分けられます。

病気がある人に病気があるという確率を”感度”と呼び、一方、病気がない人に病気がないと答える確率を”特異度”と定義しています。この感度と特異度の両方が高い方が正診率が高いということになります。

感度だけが高く特異度が低い場合、病気でない人にまで病気があると診断していることになります。

反対に、感度が低く特異度が高い場合は、病気がある人にまで病気がないと答えてしまっている状態。つまり、感度と特異度が両方高い方が正しく診断されているのです。

肺癌がある人に対しての造影CTの正診率

2016年版の画像診断ガイドラインには、造影CTの感度は98%、特異度は58%という値が示されています。つまり、感度は良いのですが、特異度が低い値です。これだと、肺がんがない人にまで肺癌があるという判断をしてしまっていることが多いことになります。もちろん造影CTのみで評価した場合での話ですので、実際に診断する場合は他のさまざまな画像所見や身体所見などの情報を総合的にみて判断するので、患者さんに伝えた割合でないことは念頭においてください。

造影CTで悪性でないと言われたら正しい可能性が高い

造影CTは感度が高く特異度が低いということを話しました。つまり、過剰に癌があると判断してしまいがちになるということです。逆に、癌がないと診断がついた場合はどうしょう。過剰にあると判断する状態において、癌でないと言われることは確率が高くなります。これを陰性的中率と言いますが、造影CTは陰性的中率が高い検査ということになります。 さて、CTの画像から良性、悪性を判断できる一般的なポイントを解説しました。しかし、今回の説明が全てではありません。もちろん他にも判断するような画像所見はたくさんあります。ただし、冒頭でも説明しましたが、画像所見だけではかなり強く疑うことができることはあっても悪性や良性だと確定診断はできませんので、注意が必要です。

4)影が大きくなるスピード

画像診断上は悪性か良性かを判断できないが、確定診断をするほど顔つきも悪くない(悪性が疑われにくい)ような症例には、経過観察をして評価する方法をとります。

影が大きくなる早さをみると悪性か良性の判断をしやすくなるからです。癌があるかもしれないという状態で経過観察をすることは、気持ちが悪いことではありますが、経過観察をしている場合は癌でない確率の方が高いです。不安にならずに冷静に受け止めましょう。

癌の倍加時間(サイズが倍になる時間)はおよそ20日から400日で、多くは100日以内だと言われます。つまりあまりに早く大きくなるものは癌ではない可能性があり、反対に、1年くらい大きくならないような癌もあるということです。

まとめ

さて、CTの画像から良性、悪性を判断できる一般的なポイントを解説しました。しかし、今回の説明が全てではありません。もちろん他にも判断するような画像所見はたくさんあります。ただし、冒頭でも説明しましたが、画像所見だけではかなり強く疑うことができることはあっても悪性や良性だと確定診断はできませんので、注意が必要です。