アミロイドPETで認知症になる前に認知症を発見する

認知症の診断ははっきりしない

アルツハイマー型認知症は、物忘れがひどくなることでわかりますが、いつから発症したのかを本人や家族に尋ねても、はっきりしません。アルツハイマー型認知症の進行はゆるやかで、突然はっきりとした物忘れが始まるわけではないからです。

実は、認知症というのは診断基準があいまいです。患者さんの症状は生活環境などに応じて日々、変化するからです。記憶力や認知機能テストで数値化しても、認知症であるという明確な境界を設定することは、とても難しいのが現状です。

自分で生活ができる。認知症の前段階

歳をとると物忘れが増えるのは当たり前のことです。認知症と診断されるのは、記憶障害などの認知機能の低下が日常生活に影響を及ぼすようになってからです。

近点は、認知症と正常との間に軽度認知障害(MCI)という分類がつくられています。物忘れが少しくらいあったからと言って、日常生活に支障がなければ何ら問題はありません。しかし、MCIの人は、人より物忘れの頻度や程度がひどく、テストを行うと、正常の人よりも明らかに記憶力が劣ります。

認知症の人は、記憶力が低下していることすら理解しておらず、自分が忘れていることにすら気がつきません。一方、MCIの人は自分で物忘れをしていることに自覚があります。つまり、物忘れがあったとしても、自分なりに対応ができ、日常の生活には問題が生じないために、認知症とは呼ばれないのです。

これから認知症になるとわかっていれば防ぐこともできる

MCIの方は、症状が悪化すると認知症になる可能性が高いので、認知症の前段階とも考えられています。アルツハイマー型認知症は、時間をかけてゆっくり進行するものです。自分がMCIだと診断されても、まだ状態を認めることができるうちに将来に備える時間が十分にあります。

認知症になる前に認知症の診断ができる?

PET検査のひとつに、アミロイドイメージング(アミロイドPET)があります。

アミロイドPETでは、従来、死後剖検でしかわからなかった、アミロイドβの沈着状態を画像化することが可能です。

PET検査とは、細胞の代謝を調べる検査で、正式名称は陽電子放射断層法といいます。放射性物質を含む特殊な薬剤を体内に投与し、細胞から放出された陽電子を画像化する方法です。

PET検査によるアミロイドβの沈着を画像化することで、アルツハイマー型認知症の早期診断や、アルツハイマー型認知症との鑑別診断に有効だと期待されている。

なぜアミロイドβが認知症の診断に役立つの?

アルツハイマー型認知症では、アミロイドβというタンパク質が脳の中にたまることから始まるということがわかってきました。

正常な脳内にもアミロイドβは存在しますが、正常な脳内では、それが自然に分解されるため、障害を起こすことはありません。

アルツハイマー型認知症の患者さんの脳を詳しく調べてみると、他の病気では見られない特徴的な病変がみられます。老廃物が固まってシミのようになっている構造物があり、これを老人斑と呼びます。そして、神経細胞の内部に糸くずのような形の物質がたまっていることもあり、これを神経原繊維変化と呼びます。個人差はありますが、発症する20年前から老人斑が増え、発症する10年前から神経原繊維変化が起こり始めると考えられています。

老人斑の主成分はアミロイドβです。アミロイドβは神経細胞を殺してしまう作用があります。

アミロイドβそのものは小さめのタンパク質で、少量であれば水に溶けます。しかし、時間が経つにつれアミロイドβ同士がくっつき、大きくなってくると水に溶けなくなっていきます。消えなくなったアミロイドβが、脳を破壊するのです。

破壊された脳は、萎縮していきます。脳の萎縮が進むと神経伝達物質のアセチルコリンをつくることができなくなり、やがて記憶をためておく海馬に悪影響を及ぼすことになります。

つまりアミロイドの沈着がわかれば、アルツハイマー型認知症の診断や他の認知症との鑑別が可能になるのです。

アミロイドPETのこれからに期待

アミロイドPETは、欧米では広く普及していますが、日本では、(2019年7月現在)健康保険適用外なうえ、機器が高額で、実施施設は限られています。

また、軽度認知障害(MCI)でアミロイドPET陽性の人のうち、82%がアルツハイマー型認知症に進行したと報告されています。

ただし、アミロイドPET陽性が、必ずしもアルツハイマー型認知症に結びつくものではありません。健常者でもアミロイドPET陽性は20~30%といわれ、追跡研究が待たれています。